SACDマルチの環境は「音楽」を愉しむ為の環境だけど、僕のアナログシステムであるマッキントッシュの真空管のシステムは「音楽を聴く手間と作法を愉しむ」環境だ。所謂「オーディオマニア的」な愉しみがここにはある。僕のマッキンには(今のところ)光学プレーヤーは繋がっていない。繋がっているのはウィーンのPro-Ject社製ターンテーブルのみ。
ターンテーブルはメカメカしい意匠が印象的で、恐らくオーディオ機器の中で一番美術的な趣味性があるんじゃないだろうか。ハイエンドのモデルになると徹底的に意匠にお金がかかっているのはその為。「音の追求」というのは屁理屈であって、「オーラ」にみんな酔いしれるのだ。僕のターンテーブルはそんなハイエンドな機器とは全く無縁なんだけど、それでもやっぱりデザイン的に印象に残る。
それにしてもターンテーブルというのは楽しい。アームの重さを調整したり、重りをぶら下げたり、カートリッジを選んだり。レコードがぐるぐる回る。針が溝をなぞる。そうやってお互いが身を磨り減らしながら音楽を奏でる。う〜ん、ロマンチック。
真空管アンプだって負けてはいない。真空管アンプは自らの命を使いながら信号を増幅し、スピーカーを震わせて音楽にしてくれる。レコードをスリーブから取り出して、ターンテーブルに載せる。レコードクランプで挟んで、テーブルを回し、ゆっくり針を降ろす。「シュー、パチパチ」という音とともに音楽が始まる。この手間、この行程が実に贅沢で楽しい!
もちろん理論的にはレコードはCDやSACDには音質面で太刀打ちできないことになっている。レコードは使うほどに摩耗し、外周と内周では音質が明らかに異なり、歪みが大きく、低音はモノラルで、左右のチャンネルセパレーションが悪くて・・・粗を挙げればキリがないが、しかしそれでもそういう不完全さが有機的な音を奏でる秘密なんだと思う。人間の感覚って複雑なんだなぁ。