フランス出身の女流ピアニスト、エリーヌ・グリモーのショパンとラフマニノフのピアノソナタ第2番のCD。彼女のことは知っていたけれど、実際聴いたことが無かった。と言うのも、CDジャケットの中の彼女の目に、言葉では表わせない「霊感」にも似た得体の知れない感覚を持っていたから。確かに美人だけど、彼女の目に何か渦巻くようなものを感じるのは私だけかな?でもこの一枚はちょっとした縁で入手した。ジャケットの写真もまるで化粧品の広告モデルのようで目つきも怖くない。ただ彼女によると、このCDのテーマは「死」なんだそうだ。うーん、ぴったり。
ショパンのピアノソナタ第2番は説明の必要も無い程超有名。葬送行進曲を第3楽章に持つアレである。そう、「ターン・ターン・タターン」という陰鬱で重苦しい、死者を送る時に聴くあの曲だ。初めてのエレーヌ・グリモー、それもいきなりショパンの2番と来たもんだ。この曲は超有名だが全楽章を通して聴いたことのある人は実はあまりいないのではないだろうか。第3楽章の「ターン・ターン・タターン」という旋律は誰でも知っていると思うが、2分半以降から始まるメロディーは大変美しく、最後にまるで死者が天国へ旅立つ際に家族・友人に感謝のメッセージを伝えているかのようで切ない。
エレーヌ・グリモーはその美貌とは裏腹に、ピアノの演奏は剛直で時には荒々しい。しかし雑という荒々しさではなく、「強さ」や「力」を感じる音だ。かと思えば、女性的で情緒的なタッチによる表現力も素晴らしく、今まで「食わず嫌い」だったことが非常にもったいないと感じた。
ところで彼女は共感覚の持ち主なんだそうだ。これは音に色を感じたり、普通の人が持ち合わせていない感覚を持っている人のこと。共感覚の持ち主は芸術家、とりわけ音楽家に多く、やはり一般が持ち合わせていない「超能力」の世界で音楽とつながることができるんだなぁ、と勝手に納得している。また、狼に霊感を感じ、音楽活動における収入の多くを狼の保護に使っているそうだ。他に幼少の頃から精神的・社会的に色々あったようで、やはりあの「目」に何かを感じていた私は間違っていなかった(^^;)
他にも彼女のCDを買ってみようと思う。