既にカタログ落ちしたスピーカーだが、格安で見つけたので購入した。Domusシリーズは最近ではToyシリーズにリプレースされたが、個人的にはToyシリーズならばSonus faberである必然性は全く無いと考えている。DomusシリーズはSonus faberの独自の響きを有しているが、Toyでは「これがソナスの音?」と文句を言ってしまいたいくらい大衆に迎合した普通の音になってしまっているからだ。
Concertino DomusはSonus faberのフードチェインでは一番下に位置するモデルだが、造りはSonus faberらしく優れた木工技術とデザインセンスで非常に美しい。サイドパネルのチークの使い方も絶妙だし、360度ぐるっと巻かれた革(合成だと思う)もなかなかセンスが良い。専用スタンドはマーメイド型と呼ばれる人魚のカーブを持った美しいものだ。
まだ導入して2週間だが連日鳴らしていたのでエージングは大分進んでいる。スピーカーは完全なエージングに数ヶ月を要するので今インプレを書いても今後化ける可能性がある事をお断りしておく。
Concertino Domusはスタンドを入れると日本での小売価格が30万近く、アメリカでも$2,200。結論から言えばこのスピーカーが出す「音」だけを見ればそれだけのお金を出す価値は無い。ただ私が払った$1,200(スタンド込み)ならばグッドディールである。このスピーカーの出す音は非常に癖があり、ストライクゾーンが非常に狭い。ハマればそれなりに独自の世界を聴かせるが、不得意な音楽は聴いていてつまらない。大雑把に言うと、交響曲は不得意、弦、ピアノ、カルテットなどの小品はなかなかのもの、男性ボーカルもよし、ただ女性ボーカルに関して言えば高い声は得意、低い声、例えばダイアナクラールの声は鼻腔が響くような癖のある声になる。この「鼻腔が響くような音」は個人的には大嫌いなので、このスピーカーでダイアナクラールは聴きそうにもない。しかしメルトーメなどの男性ボーカルは最高に聴かせるし、ヘイリーの優しいソプラノは素晴らしい。
Concertino Domusの音は濃くて線が太い。輪郭が非常にハッキリとしている音で、主旋律を追いかけやすい。ただ繊細で陰影に富んだ深い表現はこのクラスに期待できない。従ってこのスピーカーは本格的に音楽と対峙するという使い方は間違っている。Concertino Domusはその洒落た佇まいを活かしてリビングや寝室などでBGM的に小音量で聴くのが正しい使い方だと思う。
現在リビングでエージングを進めているが、そこにはすでにElipsaがあり家内には「オーディオのショールームみたい」と不評だ。そのうち寝室に持って行く事にするが、そこにはDali Helicon 300が鎮座している。オーディオは様々な機器の集合体だがスピーカーは音楽の表情をガラリと変えるので色々試したくなる。アンプやその他の機器はあまり替えたいと思わないが、スピーカーだけはいくらでも欲しい。まったく、金と場所がいくらあっても足りない。Heliconはしばらく押し入れの中で我慢してもらう事にする。