
今日のシアトル地方は初雪。私の家の近所では2センチ程度しか積もっていないが、隣り街では15センチ程度積もったらしい。シアトルは寒い印象があるが実は日本海流のお陰で冬は雨は多いが温暖で、雪は年に1、2度程度しか降らない。しかしサンフランシスコ並みに坂が多い街なので雪が降ると交通はストップ。明日月曜はどれくらいの人が出勤してくるのだろう。
そんな寒く静かな雪の日曜の朝は、リビングで真空管に灯を入れ新しく導入したパン焼き器でパンが焼き上がるのを待ちながらぼんやり音楽を聴いていた。しかし私は寒い日は何故かAlia Voxの作品を聴きたくなるので2階のマルチチャンネルの部屋に引きこもる事にした。Alia Voxは残響の多い場所での録音が多く、マルチチャンネルで聴くのが一番その場を再現できるのだ。残響が多いと言っても風呂場のようではなく、荘厳で神聖な響き。古楽器が奏でる古楽の音色が一番栄える素晴らしい音である。
音楽を聴きながらふとAlia Voxのウェブサイトを覗いてみるとJordi Savallの妻のMontserrat Figuerasが昨年11月に亡くなった事を知った。彼女のアルバムはAlia Voxから何枚から出ていて最近も一枚買っていたのだが、これが彼女の最後の作品になった。

このアルバムは彼女が亡くなる2週間半前にリリースされた。録音自体は1988年から1990年にかけてだが、この時期に敢えてリリースしたSavallの想いに触れたような気がした。曲調も影があり淋しげなものばかりで、静かな雪の日に彼女の追悼として最後まで聴き通した。

次に聴いたのは「ALTRE FOLLIE」、これは2005年のリリースなので新譜でも何でも無いが、Savallの音の世界を楽しむにはもって来いの一枚だ。古楽器の美しい響きに包まれて、目を閉じればまるでそこにいるかのような素晴らしい音楽をエクスピリエンスできる。Alia Voxファンならストックしておきたい一枚。

最後は同じくAlia Voxからバッハのブランデンブルグ。数ある古楽器によるブランデンブルグの録音の中でも一番のお気に入りで、演奏内容、音、録音全てにおいて素晴らしい出来栄え。このアルバムもやはりマルチチャンネルで聴くべきで、そのカラフルで美しい演奏を聴き終えた後は不思議な満足感とともに達成感も味わえる。
パンが焼き上がった頃下に降りて同じブランデンブルグをMcIntosh/Elipsaで聴いて見たが、やはりマルチチャンネルとは表現力の点において明らかに劣る。やはりクラシック音楽は美しい響きがあってこそ心にしみる体験ができるのだ、といつもながらの結論を再確認しながら、ホカホカの焼きたてパンを頬張っていた。
それにしてもVienna Acousticsのスピーカーは4年目に入りますます素晴らしい音を聴かせてくれるようになった。シンフォニーを聴くにはハッキリ言ってこれ以上いらない。日本でもMaestro GrandとWaltz Grandの取り扱いが始まったようなので、VAをメインに使ってる人には是非VAでマルチチャンネルに挑戦してもらいたいと思う。