先週の続きで、リビングに置くスピーカー選び。今週はB&W 802Dを聴いてみた。曲は先週と同じホルストの惑星のうち「天王星」を、そしてバイオリン、チェロのソロの3曲をCDに焼いて持参した。
B&Wはオーディオマニアなら誰でも知っている英国を代表するスピーカーメーカーのひとつ。多くの録音スタジオがB&Wをモニター用として採用しており、実力は世界トップクラスであることは言うまでもない。その中で802Dはラインナップの中核を成すモデルであり、メーカーの思想や実力が如実に現れる機種だと思う。
対するSonus faber Elipsaは人類で一番センスの良い(と思われる)イタリア人の手による「美術品」だ。録音スタジオでソナスのスピーカーを採用しているところって、あるのだろうか?聞いたことない。だが「録音スタジオで採用されている=最高の音」という意味ではないので、あまり意味はない。Elipsaはその木工技術とデザインのセンスだけで、聴く前からもうすっかり「素晴らしい音がするんだろうなぁ」と期待してしまっている。
さて、両方試聴してみて一番感じたのは「音の良さと音楽性とは必ずしもイコールではない」ということ。B&W 802Dは「優等生的な音」を出す。特性がとても良く、何を聴いてもそつなくこなす。よくよく聴くと非常に解像度が高く、分析的な音で音楽を鳴らす。「音」を聴くならこれ以上いらないというくらいに素晴らしい。
Sonus faber Elipsaはどうかと言うと、「音」自体は802Dには及ばないと思う。ただ出てくる音楽の雰囲気はこちらの方が上だ。音楽が楽しい。音楽が美しい。「音」自体に意識を奪われず、音楽に浸れる、もっと有機的で血の通った音で音楽を鳴らす。これが「イタリアのセンス」であり、「イタリアの美学」なのかも知れない。
Elipsaを聴いた後に、もう一度802Dを聴いた。やっぱり印象は変わらず。802Dは左脳で聴く音、Elipsaは右脳で聴く音、そういう違いがある気がした。スタジオではどんな機器に対してもちゃんと標準的に鳴る音を作ることが使命なので、「正確性」や「味付けの無さ」が重視されるんだろうということは想像にかたくない。そういう用途ではB&Wの、よく言えば「正確な」、悪く言えば「無機質」な音が適切なんだろうと思う。反面、Elipsaの音や音楽には「雰囲気」がある。この音作りは万人ウケするかと言うと必ずしもそうじゃないと思うが、個人的には非常に「粋」な音作りだと思った。彫りが深く陰影に富み、音楽に表情がある。802Dを女性に例えれば「顔立ちに惹かれる美女」、Elipsaは「笑顔に心を奪われる美女」、そういう違いだ。
Elipsaの方がちょっと高いが、やはりこの2機種なら迷わずElipsaだ。惚れたからには手に入れるしかないか?しかし先立つものがね・・・(^^;)