クリスマス前にMcIntoshの機器間の通信用のデータケーブルを買いにオーディオ店に寄った時に、暇そうにしてた馴染みの店員に頼んでソナスファベールのGuarneri Memento(ガルネリ・メメント)に重点を置いて色々と聴いてみた。何故このモデルに興味を持ったのかと言うと、日本で大人気を博しているモデルだけにじっくり聴いてみようと思ったのだ。
Guarneri Mementoはご存じの通りソナスファベールを代表する作品のひとつで、ブックシェルフ型だがそのゴージャスな専用スタンドと組み合わせるとトールボーイ並みの大きさになる。音は暗めで好きな人は大好きになる音だが、好きではないという人もいる音作りだ。格下のAuditor Mと比較すると、聴く人を選ぶスピーカーという印象。個人的には巷で言われるようにボーカルが良かった。弦楽器はバイオリンやビオラ辺りは素晴らしい音がするが、チェロやコントラバスは響きや低域が足りず中途半端な音だという印象を持った。編成の大きいシンフォニーなどは、やはりブックシェルフの小さい箱で鳴らしている為にミニチュア感があり、入り込めない。
上の写真はエリプサとガルネリの比較図。スタンドを取り除くと一目瞭然だが、ブックシェルフスピーカーというのはどうしても物理的にキャビネットの容積が足りないので、それだけで様々な制約を持つ事になる。ガルネリの場合はボーカルはオーディオ的には良かったが、それでも上半身像が喉から歌っている感じがしてとても腹の底から歌っているようには聞こえなかった。ただこの「オーディオ的」満足感はガルネリの得意とする部分じゃないかと思う。
チェロやコントラバス、大編成のオーケストラはキャビネットを見れば分かる通りブックシェルフには厳しすぎる。本物の楽器を見ればその広い表板(ハーモニックプレーン)から音が放射される様子が想像できるが、ガルネリのように狭いバッフルと小さい容積しか持たないスピーカーでは物理的限界があるのは自明の理である。
従って、オーケストラを聴くのであればブックシェルフは考慮せずに大きめのフロア型に行くべきだと相談されれば答えるようにしている。ブックシェルフ型は本来文字通りブックシェルフに置くべきで、スタンドを使うならフロア型と設置面積は変わらない。ブックシェルフは場所に制約がある場合に買えば良いと思うが、それ以外では特に選ぶ理由が見あたらない。